■電気泳動とは
生物科学の研究室では日常的に行われています。泳動により分離されたバンドは目では見えないので、色素で染めることになり、タンパク質には Coomassie
Brilliant Blue (CBB) が、遺伝子(DNA)には Ethidium Bromide (EtBr) が用いられます。 CBBの場合、青く染まるバンドは目視で観察できますが、EtBr
の場合はUVを照射して発する蛍光を観察します。
電気泳動についての詳細は、http://www.atto.co.jp/site/products/epreagent/etbr/WSE-7410 をご覧ください。
(注)DNAのアガロース電気泳動ゲルの写真は、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AD%E5%8C%96%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0
からの転載です。
■Coomassie Brilliant Blue 廃液処理の現状
濃厚なCBB染色液に浸漬されたゲルは、全面が青色に染まるので、このバックグラウンドが抜けるまで脱色操作が繰り返されます。その結果、青色の染料廃液が多量に発生します。廃液は濃く着色しているだけでなく、メタノールを30%、酢酸を5%含むことから、そのまま排水に流すことは不適切です。
染料を活性炭に吸着させた後に放流したり、あるいは脱色液に再利用する研究室もあり、その処理方法はさまざまです。 |
■Ethidium Bromide (EtBr) 廃液処理の現状
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EtBrには強力な変異原性があるため、使用後は適切な処理が求められています。アメリカの大学のサイトでは、EtBrの処理方法が具体的に示されていますが、日本では、ここまでは進んではいません。しかし、数年前、EtBrを含むゲルが一般ごみとして排出されていたのが露見して社会問題になり、それ以降、少しは意識されるようになっています。
※「Ethidium Bromide」と「waste」の2つをキーワードにして検索すると、アメリカの大学での処理の現状がよくわかります。
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■EtBr廃液の処理方法いろいろ
古くは、「流し」へ水道水とともに流されていました。
次亜塩素酸塩で無色化した後に放流することもありました。
更に変異原性の強い物質に変換されるとの報告もあり、今では推奨されていません。
孫引きで2002年の報告ですが、「日本におけるEtBr 廃液の処理は,58%が次亜塩素酸ナトリウムによる酸化分解処理のみで排水処理施設に廃棄している」との報告があります(大峠和彦,宮西節子.遺伝子・染色体検査後の廃棄物処理に関するアンケート調査.医学検査.2002,vol.51,no.6,p.928-931.)。
現在は、活性炭や樹脂を用いての吸着処理が一般的です。
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処 理 方 法 |
原 理 |
操作性 |
処理能力 |
処理後 |
Validation(※) |
備 考 |
下水への放流 |
希釈 |
○ |
∞ |
○ |
× |
もってのほか |
次亜塩素酸で処理 |
脱色 |
△ |
- |
- |
× |
より危険な物質へと変換 |
活性炭、樹脂で処理 |
吸着 |
○ |
○ |
△ |
× |
吸着処理の限界が不明
不燃物としての処理が必要 |
エチブロデストロイヤー |
分解 |
○ |
◎ |
◎ |
× |
刺激性薬品を含む
処理できたか不明確 |
ゼロ・カラム(新処理) |
吸着 |
○ |
◎ |
◎ |
◎ |
吸着限界が明確
可燃物としての処理が可能 |
※Validation(ヴァリデーション):規定された要求事項がその記述された使用に対して適切であることを検証すること。
例えば、設定温度の実証、測定重量の実証、確実に洗浄されたかの実証など。
■市販のEtBr処理ツール
活性炭による吸着処理が一般的です。
使用形態としては、活性炭を漉き込んだろ紙による濾過吸着方式(写真@)や、
ビニール袋に廃液と一緒に入れて吸着させるティーバッグ方式(写真C)が代表的なものです。
いずれのツールも結構高価です。
最近では、薬剤で分解する方法もあります(写真D)。[写真は、Bを除き、それぞれの取説記事から転載しました]
活性炭吸着 |
イオン交換樹脂吸着 |
化学分解 |
新吸着式 |
@濾過方式 |
A袋方式 |
Bカラム方式 |
Cお茶パック方式 |
DEtBrデストロイヤー |
ゼロカラム |
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■新しい吸着システム
EtBr吸着システムはシンプルです(Fig.6)。
商品はカラムとチューブからなります(Fig. 1)。
操作は至って簡単です。
(1)チューブを上下のジョイントに繋ぎます。
(2)ホルダーに立てます(Fig.2〜4)
Fig.2、3は自作。ホルダーを使わずに、シンクから垂らしても使えます(Fig.5)。
(3)EtBr廃液ボトルを約20cmの高さの台の上に置きます。
ホルダーを使わない場合、ボトルを台上へ置く必要はありません。
(3)チューブの最下端から注射器や駒込ピペットなどで吸引します
液は自然落下で流れます。
バイモルやぺリスタなどのポンプも使えます。
CBB廃液では染料がオカラに吸着されて透明になり脱色液として再利用できます(Fig.7)。
EtBrがカラムに吸着された部位は紫外線照射で蛍光を発します(Fig.8)。
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商品の内容 |
いろいろなホルダー |
ホルダーなし |
組み立て |
CBBへの利用 |
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Fig.
1 |
Fig. 2 |
Fig.
3 |
Fig.
4 |
Fig.
5 |
Fig.
6 |
Fig. 7 |
Fig. 8 |
