吸着材料について

 Zero column に用いている吸着剤は、活性炭でもなく、イオン交換樹脂でもありません。安っぽくなるので正体は言わない方がいいとのアドバイスもありましたが、調べれば判ることなので言えば、豆腐製造の副産物である「オカラ」です。吸着剤に"オカラ″を用いることそのものが重要なことではありません。大事なことは、オカラが(1)吸着性能に優れていること、(2)吸着状況が目視で確認できることです。以下に、オカラについての情報です。

(オカラの現状)
 オカラの語源のひとつに、「お空」からきた、との説があります。これは、オカラが絞り粕で、何もない「カラ」を意味しています。大豆は約40%のタンパク質を含み、熱水で抽出した液(豆乳)にマグネシウム塩やカルシウム塩を加えてタンパク質を凝固、成形させたものが豆腐です。丸大豆1kgから4〜5kgの豆腐が得られます。固形物の歩留まり(大豆中の固形物が豆腐の固形物になる割合)は約50%であり、残りの50%は副産物の豆腐粕(オカラ)として1.2トンが発生し、その量は年間70〜80万トンと言われています。

 オカラは従前から、家畜の飼料として利用されていましたが、安価で品質が安定した輸入飼料によりその需要は低下し、現在では大部分が産業廃棄物として処理されています。上記のようにオカラは大豆からタンパク質を抽出した残りですが、なお約5%(乾物当たりでは約25%)のタンパク質を含み、しかも水分含量が約85%(資料によって多少異なりますが、おおよそ80%前後)と多いことから腐敗しやすく、取り扱いに注意をが必要です。もっとも最近では乾燥オカラが食品添加物として販売されているので、それらを購入すれば特に問題はありません。乾燥オカラは、例えば、(株)テンセイジャパン http://www.tensei-j.com/で販売しています。

(オカラの成分)
 群馬県の工業試験場がオカラの成分分析を詳細に行っています。試料数は6で、数値は平均値、( )内は乾物換算の値です。
水分:80.2%、タンパク質:4.90%(24.50%)、脂肪:2.60%(13.00%)、粗繊維:3.70%(18.40%)、灰分:0.70%(3.5%)、カルシウム(mg/100g):66.20(334.00)、リン(mg/100g):69.30(349.00)、鉄(mg/100g):1.50(8.00)、カリウム(mg/100g):316.30(1594.00)、マグネシウム(mg/100g):35.20(177.00)、銅(mg/100g):0.13(0.65)

(豆腐業界の現況)
 過去の調査から得られた豆腐業界の現状を紹介します。と言っても、かれこれ10年前のことです。
(参考資料1)
 平成14年(2002年)に大豆輸入商社の潟zンダトレーディング(http://www.hondatrading-jp.com/index.php)と大豆卸問屋の滑ロ正(http://homepage1.nifty.com/soybeans-west/marusho/office.html)との面談から得た、当時の豆腐業界の状況です。前者は、自動車メーカーのホンダの子会社ですが、「ホンダが、なぜ大豆を?」との疑問をお持ちになるでしょう。それは、ホンダはアメリカのオハイオ州に工場を作りましたが、オハイオ州は大豆の産地で、日本から自動車の部品を輸出した帰りに大豆を積んで帰るのです。

 ★全国で400万トンの大豆が消費されている。うち300万トンが大豆オイルの抽出に使われ、残渣は脱脂大豆として飼料や醤油製造に使われる。100万トンは食品向けで、うち50万トンが豆腐と油揚に、12万トンが納豆に使われる。その他、豆乳(7,000トン)などに使われる。
丸大豆(Dry)1トンから1.2トンのオカラ(Wet)が発生する。近畿圏で20万トン、全国では80万トンが発生する。オカラのタンパク含量は15%で、昔は25%もあったが、絞り方が上手になって、だんだん少なくなっている。水分含量は80%で、乾燥させると、1/5に減量、容積も減少する。
水分を含むオカラの処理料はトン当たり1.0〜1.3万円で、別途運賃がいる。処理料のことを考えて、乾燥機を導入する企業も出てきている。1袋60kgとして100袋処理能力の場合、5,000〜6,000万円の資金が必要である。豆腐屋は、全国で12,000軒、8割方が小企業である。★


 ところで、卯の花はオカラを使った料理であるが、昔ほどおいしくないとの話がある。これは、昔は手で絞っていたので、オカラにはまだ沢山のタンパク質を含んでいたのでまだ味があったが、現在は機械絞りで上記のように豆乳は徹底的に究極まで絞られるので、残されたものはまさに「絞り粕」で、これを料理に使ってもいい味がしないのは無理もないことです。

(参考資料2)
 貝塚市二色浜の工業団地に油揚げだけを作っている大きな食品会社、向井食品があります(http://www.mukai-shokuhin.co.jp/recycle.html)。社長さんはとても気さくな方で、実験用に何度か乾燥オカラをいただきました。その社長さんに2004年10月にお聞きしたことです。
 
 ★乾燥オカラは、350kg入りの大きな袋で毎日5袋(したがって約2トン)、1週間で8〜10トンでる。80〜85%の水分含量があるオカラを乾燥機で8%にしている。乾燥機の1号機は6,000万円し、さらに追加して2,000万円の2号機を導入した。建屋の費用は別である。8円/kgで販売している。★

 それから数年たって、アメリカでの不作により大豆の輸入が減少した頃、乾燥オカラをいただきに伺ったら、飼料会社がこの乾燥オカラを買い付けに来ていました。「ものがないのに、東北からやってきて、乾燥オカラができる端から、トラックに積み込んでゆく。荷台が満杯にならなくても、引き帰して行く。」と呆れていました。それまで飼料メーカーは乾燥オカラには見向きもしなかったのに、当時はそのくらい切羽詰っていたのでしょう。